TRT(Tinnitus Retraining Therapy:耳鳴り治療)
耳鳴りが気になる人と気にならない人との違いは「脳の働き」にあります
耳鳴りのメカニズムについては全てが解明されているわけではありませんが、耳鳴りは元来、誰でも聞こえているという説があります。 病気やストレス、難聴をきっかけに苦痛をもたらすような耳鳴りになると言われています。
日々の生活の中で私たちの身の回りでは様々な音があります。音を聞いた時に蝸牛(耳の奥の組織)で音の調節機能が働き、
脳で音として認識されます。
その過程で必要な音のみが選択され、雑音など必要ない音(空調の音など)は取り除かれます。
耳鳴りを過度に意識してしまうと、脳が耳鳴りを必要な情報として判断してしまうため、治りづらくなってしまいます。
難聴がある場合には脳に伝わる音が少ないために、必然的に耳鳴りが必要な情報として選択されやすくなってしまいます。
ストレスは耳鳴りを悪化させます
外からのストレスがかかると、脳は耳鳴りを「苦痛なもの」として認識しやすくなります。 疲れやストレスがあるときに耳鳴りを感じやすいのはこういった働きによります。
耳鳴りの治療法(TRT療法)とは?
脳のメカニズムに着目
「TRT(Tinnitus Retraining Therapy)」とは脳のメカニズムに着目し、悪循環の回路を断ち、
耳鳴りを鳥のさえずりや時計の音のように「無視しても良い音」と認識できるようにしていく治療法です。
【1】認知行動療法 【2】音響療法 【3】薬物療法
これらを併用して、耳鳴りを緩和し、日常生活に支障のない状態を目指します。
※耳の症状(聴こえ・めまい・耳鳴り)での受診の方は検査にお時間がかかりますので、午前・午後ともに診察終了30分前までにご来院ください。
1️⃣ 認知行動療法:耳鳴りに対する理解を深める
耳鳴りの原因となる疾患が診断できればその治療を行いますが、特に病気がなくとも耳鳴りを感じるケースはあります。
まずは、診察を通して原因となる病気がないことを確認し安心していただくことで、耳鳴りに対する恐怖心を和らげることができます。
さらに、耳鳴りのメカニズムについてご理解いただくことで耳鳴りに対する考え方を肯定的なものに変えることができます。
外来ではパンフレットなどを使用しながら、耳鳴りに対する理解を深めることで、耳鳴りの症状の緩和を目指します。
2️⃣ 音響療法:環境音を増やす
静かな環境では、耳から脳へ伝わる情報が少ないため、耳鳴りを大きく感じやすくなります。
音響療法とは、環境音(周囲の音)を増やすことで耳鳴りを緩和していく治療法です。
聞く音は長く聞いても疲れないような自然の音(川のせせらぎ音など)がよいとされていますが、ご自身の好きな音楽など何でもよいと考えます。
コツとしては耳鳴りを完全に打ち消すのではなく、少し耳鳴りが聞こえるくらいの音量で音をかけながしていくと脳が耳鳴りに慣れてきます。
【サウンドジェネレーター】
補聴器のように装着して使用する、人工的に持続して音を作り出す治療機器です。
ご興味のある方は当院の補聴器外来にてお試しいただけますので、まずはご相談下さい。
難聴の方は、補聴器をつけて音の豊富な環境を作りましょう
【難聴のある方への音響療法には補聴器が有効です】
補聴器によって多くの音を聞き取れる状態にすることで、前述と同様の効果が得られます。
日常生活でも聞こえがよくなるメリットもありますので、当院補聴器外来の受診をご検討いただき、耳鳴りが緩和されるかお試し下さい。
3️⃣ 薬物療法
末梢神経の調子を整える薬や漢方薬が有効であることもあるので、必要に応じて使用します。
【鼓膜マッサージのご案内】
上記の治療は耳鳴り治療の基本となるものですが、当院では加えて「鼓膜マッサージ」も併用しております。
鼓膜に空気圧をかけることで、内耳(音を電気信号に変換する部位)の血流や代謝を促すことによって耳鳴りが起こりにくい状態へ整えていきます。
耳鳴りの症状の方やメニエール病の方を中心として医師が必要と判断した方におすすめしています。
特に痛みもなく、重篤な合併症もありません。ご興味のある方は診察の際に医師にお伝え下さい。
